米AMDのCEOリサ・スー博士は、2024年第四四半期の決算説明会において、「Radeon RX 9070シリーズが3月初旬に発売される」ことを明らかにしました。同シリーズは、次世代GPUアーキテクチャ「RDNA4」を採用し、レイトレーシング性能の大幅向上やAIを活用したアップスケーリング技術を搭載。これにより、「ハイボリューム層(大量普及層)のエンスージアスト向け市場」をターゲットに据えています。
スー博士によれば、Radeon 9000シリーズの投入に向けて在庫調整を進めた結果、ゲーミングGPU部門の収益は前年比で減少したものの、「RDNA4は4Kゲーミングを主流ユーザーに届ける」と強調。特に「Radeon 9070」シリーズの役割として、高性能ながら手頃な価格帯での提供を目指す姿勢が伺えます。
「ハイボリューム層」戦略の意図と市場位置づけ
AMDが今回の発表で繰り返し述べたキーワードが、「ハイボリューム層のエンスージアスト市場」です。これは、従来の「メインストリーム」や「ミドルクラス」とは異なる新たな分類。具体的には、「高価なハイエンドGPUを必要としないが、最新技術を求める層」を指すと解釈されます。
従来のGPU市場では、NVIDIAのGeForce RTX 80/90番台がハイエンド、70番台がハイミドルと位置付けられてきました。AMDの「9070」という命名は、競合製品との階層を分かりやすくするための戦略的改名です。スー博士は、Radeonの新型番体系は、競合製品のSKU階層を明確に反映する」と述べ、NVIDIAとの直接対抗を意識していることを示唆しました。
現在、NVIDIAはRTX 5070 Tiを2月20日、RTX 5070をその後(未定)に発売予定で、価格はそれぞれ$749(約112,350円)と$549(約82,350円)に設定。一方、AMDはRX 9070シリーズの価格を公表していませんが、「ハイボリューム層」という表現から、NVIDIAより低価格で攻勢をかける可能性が予想されます。
RDNA4アーキテクチャの革新性と技術解説
RDNA4の最大の特徴は、「レイトレーシング性能の飛躍的向上」と「AIアップスケーリング技術」の搭載です。AMDによれば、RDNA4ではレイトレーシングの処理効率が前世代比で最大2倍向上。これにより、4K解像度での光の反射や影の描写がさらに精密になります。
また、AIを活用した「Hybrid Upscaling」技術は、低解像度の画像を高解像度に変換する際に、ディープラーニングを応用。従来のFSR(FidelityFX Super Resolution)よりも自然な画質を維持しつつ、フレームレートを向上させます。スー博士は、「Hybrid Upscalingによって、ミドルクラスのGPUでも高品質な4Kゲーミングが可能になる」と述べ、技術的な優位性をアピールしました。
さらに、RDNA4では消費効率も改善。製造プロセスはTSMCの4nmプロセスを採用し、同一性能での電力消費を15%削減。これにより、小型のポータブルゲーミングPCや省電力設計のノートPCへの搭載も視野に入れています。
NVIDIAとの競争と市場への影響
AMDが3月にRX 9070シリーズを投入する一方、NVIDIAはRTX 5070シリーズで先行する構えです。特にRTX 5070 Tiは、CUDAコア数が前世代比20%増の7,680基となり、AI演算性能でも優位性を主張。AMDとの差別化として、「DLSS 4.0」による超解像技術や、クリエイター向けのAIツール連携を打ち出しています。
ただし、NVIDIAの価格戦略はAMDにとって逆風となる可能性も。RTX 5070 Tiの$749(約112,350円)は、RX9070シリーズの最上位モデルと同等かやや高めの価格帯。AMDが「ハイボリューム層」に照準を合わせる以上、RX9070の価格は$749(約112,350円)は、RX9070シリーズの最上位モデルと同等かやや高めの価格帯。AMDが「ハイボリューム層」に照準を合わせる以上、RX9070の価格は$500~$600(約75,000~90,000円)程度に設定されるとの観測が業界関係者の間で広がっています。
ゲーム開発者からの反応も注目されます。AMDはFSR 3.1のオープンソース化を進めており、RX 9070シリーズの発売と連動して、対応タイトルを増やす計画。対するNVIDIAはDLSS 4.0の独占性を武器にしていますが、AMDが価格性能比で優位性を示せれば、ミドル層ユーザーの支持を集める可能性があります。
まとめ:GPU市場の新たな戦いが幕を開ける
AMDのRadeon RX 9070シリーズは、「高性能を手頃な価格で」という従来の戦略をさらに推し進めた製品と言えます。RDNA4アーキテクチャによる技術革新と、NVIDIAに対する明確な対抗意識が感じられる一方、価格設定や実際のベンチマーク性能には未知数の部分も残ります。
日本市場では、輸入コストや為替変動の影響を受けやすいため、AMDが直接販売価格を管理する「AMD Direct」プログラムの拡充が期待されます。また、AI技術を活用したアップスケーリングの進化は、ポータブルゲーミングPCや4K対応ノートPCの普及にも追い風となるでしょう。
3月の発売後は、NVIDIAのRTX 5070シリーズとの比較レビューが相次ぎ、消費者の選択肢が広がることが予想されます。両陣営の技術競争が、ゲーミング市場全体の活性化につながるか注目です。
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