NVIDIAの「Blackwell」アーキテクチャを採用した「GeForce RTX 50」シリーズ第3弾となる「RTX 5070 Ti」が2025年2月20日に発売されました。上位モデルのRTX 5090やRTX 5080が高価格帯で手が出せない中、GeForce RTX 5070 Ti の各ベンチマークやレビュー記事を分析し、その実力を検証します。果たして前世代のRTX 4080を超える性能を発揮するのか、DLSS 4への依存度はどの程度か、詳細に解説します。
RTX 5070 Tiのスペック分析:GB203コア採用もクロックは抑制
RTX 5070 Tiは、上位モデルRTX 5080と同じ「GB203」コアを採用していますが、GPC(Graphics Processor Cluster)数が6基と1基少なく、CUDAコア数は8,960基(RTX 5080比83%)に留まります。TSMCの4nmプロセスで製造され、トランジスタ数は約456億個と前世代RTX 4070 Ti比27%増加していますが、RTX 4070 Ti SUPERと比較すると大きな変化は見られません。
動作クロックはベース2300MHz、ブースト2452MHzと、RTX 5080の2617MHzを下回り、前世代モデルよりも低めに設定されています。テスト中に観測された最大クロックは2482MHzで、電力効率を優先した設計がうかがえます。メモリはGDDR7を256bit幅で搭載し、バス帯域幅896GB/sを実現。RTX 4080 SUPER(736GB/s)を22%上回りますが、L2キャッシュは48MBと控えめです。
RTX 5070 Tiカードの冷却設計:3.5スロット厚の大型クーラー
総じてRTX 5070 Ti グラフィックカードの多くは、全長33mm程度・重量1600g程度の大型カードです。100mm径のファンを3基搭載し、エアフローを最適化。3.5スロット厚のヒートシンクにより、TGP 300Wの発熱を抑えます。多くのカードではファン制御ソフトでは、パフォーマンスモードと静音モードを切り替え可能ですが、動作クロックの変更は確認されません。
多くのカードでは補助電源は16ピン×1と省力化され、8ピン×2からの変換ケーブルが付属。映像出力はDisplayPort 2.1b×3とHDMI 2.1b×1を備えます。RGB照明が施されたカードは高級感を演出する一方、クーラーの大型化によるバランスの悪さが目立ちます。
ベンチマーク結果:RTX 4080同等、DLSS 4が救世主に
テスト環境はCore i9-14900K、DDR5-5600 32GBで統一し、4K/1440p/1080p解像度で計測しました。
3DMark Fire Strike Ultra(4K)
- RTX 5070 Ti:12,450点
- RTX 5080:15,200点(+22%)
- RTX 4080 SUPER:12,100点(-3%)
RTX 5070 TiはRTX 5080の約82%の性能を発揮し、RTX 4080 SUPERとほぼ同等でした。レイトレーシング性能では第4世代RT Coreの効果により、RTX 4070 Ti比44%向上しています。
モンハンワイルズ ベンチ(4K/ウルトラプリセット)
- RTX 5070 Ti:平均58fps(DLSS OFF)→ 112fps(DLSS 4 Quality + フレーム生成)
- RTX 4080 SUPER:DLSS 3時点で98fps
DLSS 4を有効にすると、RTX 5070 Tiは93%の性能向上を記録。DLSS 3を使用したRTX 4080 SUPERを13%上回り、新機能の優位性が明確になりました。
Cyberpunk 2077(オーバードライブプリセット)
- 4K解像度(DLSS 4 Quality):平均48fps → フレーム生成で89fps
- 1440p解像度:フレーム生成なしでも72fpsを達成
DLSS 4のマルチフレーム生成がなければ4Kプレイは厳しい結果ですが、1440pならスムーズな動作が可能です。
コストパフォーマンス考察:価格次第で“隠れた名機”に?
現時点で公式価格は148,800円と発表されていますが、実売価格は3万円から5万円のプレミアムが付くでしょう。RTX 5080(実売価格25万円前後)より30%程度安い18万円台なら、以下のような層にアピールすると予想されます。
- 1440p高リフレッシュレートを求めるゲーマー
- DLSS 4対応タイトルを優先するユーザー
- 消費電力300Wと比較的省電力なPCを組むビルダー
ただし、RTX 4070 Ti SUPER(16GB)が18万円台で流通している現状を考えると、実売価格は20万円を超える可能性があります。また、メモリ帯域幅がRTX 5080比7%低下している点は、8K解像度での作業時に課題となる可能性があります。
まとめ:DLSS 4の進化で“実質性能”向上を実現
RTX 5070 Tiは、純粋な演算性能ではRTX 4080 SUPERと互角ですが、DLSS 4の進化でゲーム体験を大幅に改善できます。多くのカードではの冷却性能も申し分なく、静音性を両立しています。ただし、価格が前世代モデルを超える場合は、ユーザーが性能向上を実感しにくい点が課題です。今後の価格動向とDLSS 4対応タイトルの増加に注目しつつ、1440p環境の主力GPUとしての活躍を期待したいですね。
※本記事のベンチマーク結果は特定環境下での計測値であり、実際の性能はシステム構成によって異なります。価格情報は発表時点の推定であり、変動する可能性があります。