海外メディア「TechpowerUP」が衝撃的な報告を行いました。同社がレビュー用に入手した「ZOTAC製GeForce RTX 5090」で、公式仕様よりも低い性能が検出されたのです。詳細を調査した結果、GPU内のROP(Raster Operation Processor)ユニットが168個しか搭載されていないことが判明。本来の仕様は176個であるため、8個の欠落が明らかになりました。
ROPはグラフィックスパイプラインの最終段階を担う重要なユニットで、ピクセル処理の効率に直結します。欠落の影響はゲーム性能に顕著で、平均4~5%のフレームレート低下が確認されました。当初はZOTAC製のみの問題と思われましたが、その後主要AIBメーカー(Add-in Boardパートナー)の複数ブランドで同様の事象が報告され、問題が拡大しました。
NVIDIA公式発表「0.5%未満に影響 生産ラインは既に修正済み」
対象はRTX 5090/5090D/5070 Ti ユーザーは代替品申請可能
2月22日、NVIDIAは公式声明を発表し、以下の事実を明らかにしました。
- 影響を受けたGPUはRTX 5090、RTX 5090D(中国向けモデル)、RTX 5070 Tiの3機種
- 全出荷数のうち0.5%未満(半パーセント) が該当
- 欠落は各GPUで1つのROPユニットのみ(RTX 5090は176→175、5070 Tiは96→95など)
- AI処理やコンピュート性能には影響なし
- 問題は製造工程の異常(Production Anomaly) が原因で、既に修正済み
NVIDIAは「ユーザーが本来の性能を享受できないことは容認できない」として、影響を受けたユーザーにはメーカー経由での無償交換を保証。具体的な手順として、以下を推奨しています。
- GPU-Z(無料診断ツール)でROP数を確認
- 数値が公式仕様より少ない場合、購入したボードメーカー(ZOTAC、ASUSなど) に連絡
- 交換手続きを進める
課題は「供給不足」 交換に数週間~数か月の遅延リスクも
RTX 50シリーズの在庫逼迫がネックに
NVIDIAの迅速な対応が評価される一方で、代替品入手までの遅延が懸念されています。現在、RTX 50シリーズ(特にRTX 5090)は世界的な需要に対応できておらず、主要小売サイトでは入荷待ちの状態が続いています。
タイの小売業者は「7月まで在庫なし」と告知する事例も発生。影響を受けたユーザーが交換用GPUを受け取れるまで、数週間から数か月の待機を余儀なくされる可能性があります。また、RTX 5070 Tiは発売直後のため、不具合の報告例が少なく、潜在的な影響範囲が不透明な点も課題です。
ユーザーがすぐにできること ~不具合の確認方法と対処法
ステップバイステップで解説
- GPU-Zのインストール
TechpowerUP公式サイトから無料ダウンロード。 - 「ROP/TMU」欄を確認
RTX 5090の正常値は「176 ROPs」、RTX 5070 Tiは「96 ROPs」。これより少ない数値なら不具合の可能性あり。 - メーカーサポートへ連絡
例:ZOTACユーザーはサポートフォームから「ROPユニット欠落」を報告。購入証明書とGPU-Zのスクリーンショットを添付。 - 返送キットを受け取り、GPUを送付
メーカーから送られる指示に従い、代替品と交換。
なぜ起こった? 専門家が指摘する「ブラックウェル世代の供給プレッシャー」
背景に「AI需要とのリソース競合」説
半導体アナリストの間では、今回の不具合が発生した背景として、以下の要因が指摘されています。
- AI向けGPU(H100など)の生産優先:NVIDIAの製造リソースがAIチップに集中し、GeForce向けラインに負荷がかかった可能性
- 新アーキテクチャ「ブラックウェル」の初期ロット問題:新設計の導入時に発生しがちな「初期不良率の上昇」
- サプライチェーンの複雑化:TSMCの3nmプロセス採用に伴う製造難易度の上昇
NVIDIAは2024年以降、AI市場向け製品の売上高が全体の60%を超えており、コンシューマ向けGPUの生産体制に課題が生じているとの見方もあります。
まとめ:ユーザーは慎重な確認を メーカーは透明性ある対応を
今回のROPユニット欠落問題は、高性能GPUの複雑化が招くリスクの一端を示しています。影響率0.5%は低いとはいえ、約20人に1人の割合で不具合が発生する計算です。ユーザーには「高額な買い物だからこそ、購入後のチェックが重要」という教訓を残しました。
NVIDIAとAIBメーカーには、速やかな交換体制の整備と、今後の生産プロセス改善が求められます。一方で、RTX 50シリーズの真価は「完全仕様」でこそ発揮されるもの。不具合の可能性を恐れず、正しい手順で確認・対応することが重要です。
今後の展開に注目しつつ、ユーザーは公式情報と信頼できるメディアの情報を参考に、適切な判断を心がけましょう。
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