AMDが新たに発表したRyzen AI MAX+ 395(開発コード名:Strix Halo)APUが、NVIDIA RTX 5080グラフィックカードと比較して、DeepSeek R1 AIベンチマークで3倍以上の性能を発揮することが明らかになりました。この驚異的な性能差は、特に大規模なAIモデル処理において顕著に表れています。
AMDの最新プレミアムAPUは、Zen 5 CPUコアと50 TOPS(1秒あたり50兆回の演算処理能力)を誇るXDNA 2 NPU、そして統合GPUを組み合わせることで、薄型軽量ノートPCにおいても前例のないAI処理性能を実現しています。特にローカルAIモデル、具体的には大規模言語モデル(LLM)アプリケーションでの処理において、競合製品を大きく上回る性能を示しています。
Ryzen AI MAX+ 395の圧倒的なAI処理性能
Ryzen AI MAX+ 395 APUの最大の強みは、その大容量統合メモリにあります。最大128GBのメモリを搭載可能で、そのうち最大96GBをVariable Graphics Memory技術を通じてVRAM(ビデオメモリ)として割り当てることができます。これにより、競合他社のAPUが扱えない大規模なAIモデル、例えばGoogle Gemma 3 27B Visionなどのモデルでも問題なく動作させることが可能となっています。
具体的なベンチマーク結果では、Intel Arc 140Vと比較して最大2.2倍のトークン処理速度を実現。さらに、Llama 3.2 3b Instructなどの小規模モデルでは最初のトークン生成までの時間が最大4倍速く、7-8Bパラメータモデルでは最大9.1倍、14BパラメータモデルではなんとIntel Core Ultra 258Vと比較して12.2倍の速さを記録しています。

ビジョンモデル処理においても、IBM Granite Vision 3.2 3bで最大7倍、Google Gemma 3 4bで最大4.6倍、Google Gemma 3 12bで最大6倍の性能向上を示しており、全方位でAI処理性能の優位性を証明しています。
NVIDIA RTX 5080との衝撃的な性能差
AMDが公開した最新ベンチマークでは、特にAIモデルのサイズが16GB VRAMを超える場合、Ryzen AI MAX+ 395 APUがNVIDIA RTX 5080に対して最大3.05倍の性能向上を実現していることが示されています。
この圧倒的な差は、メモリ容量の違いから生じています。Strix Halo APUは最大128GBの統合VRAMを利用できるのに対し、RTX 5080は16GB VRAMに制限されています。上位モデルのRTX 5090でさえ32GB VRAMに留まり、しかも消費電力はRTX 5080の360W、RTX 5090に至っては575Wと非常に高い値を示しています。

一方で、RTX 5080やRTX 5090のVRAM容量内に収まるサイズのモデルでは、NVIDIAの単体GPUソリューションの方が性能は優れていますが、それでもStrix HaloはAPUという統合ソリューションとして非常に強力な性能を維持しています。
コンシューマー向けAIワークロードでの実用性
Ryzen AI MAX+ 395プロセッサは、llama.cpp搭載アプリケーションやLM Studioなどのコンシューマー向けAIワークロードで特に優れた性能を発揮します。これらのツールは、技術的な知識がなくても最新の言語モデルをローカルで実行できる環境を提供するもので、まさに一般ユーザー向けLLMワークロードの究極のサポートとなりつつあります。
特に注目すべきは、Microsoft社が推進するCopilot+対応PCとの比較です。AMDのRyzen AI MAX+ 395は、Copilot+競合製品と比較して、トークン処理速度や初回トークン生成時間、大規模パラメータモデルの処理速度など、あらゆる面で優位性を示しています。
大容量メモリがもたらすAI処理の可能性
Ryzen AI MAX+ 395の最大の強みは、やはりその大容量統合メモリと言えるでしょう。最大128GBという統合メモリ容量は、競合製品の最大32GBと比較して圧倒的な優位性を持ちます。
この大容量メモリは、特に大規模AIモデルの処理において真価を発揮します。例えば、Google Gemma 3 27B Visionのような大規模モデルは、他のAPUでは扱うことすらできませんが、Ryzen AI MAX+ 395なら問題なく動作させることができます。
さらに、Variable Graphics Memory技術を用いて最大96GBをVRAMとして割り当てることができるため、AIモデルのサイズに応じて柔軟なメモリ配分が可能となります。これにより、よりサイズの大きなAIモデルを効率的に処理することができ、単体GPU製品と比較しても圧倒的なアドバンテージを持っています。
まとめ:ノートPC向けAI処理の新時代の到来
AMD Ryzen AI MAX+ 395「Strix Halo」APUは、特に大規模AIモデル処理において、NVIDIA RTX 5080を含む競合製品を大きく引き離す性能を示しました。この成果は、大容量統合メモリを最大限に活用したAMDの戦略が成功を収めていることを示しています。
特に16GB以上のVRAMを必要とする大規模AIモデルでは、最大3.05倍という圧倒的な性能差を実現。これにより、ローカルでの大規模言語モデル処理やビジョンモデル処理など、高度なAIワークロードがノートPCでも効率的に実行できる時代が到来したと言えるでしょう。
また、消費電力の面でも単体GPUソリューションと比較して大きなアドバンテージを持つことから、薄型軽量ノートPC向けのAI処理ソリューションとして、非常に有望な選択肢となっています。
今後のAIアプリケーションの普及に伴い、このような高性能かつ効率的なAPUの需要はさらに高まることが予想されます。AMDのRyzen AI MAX+ 395は、そんなAI時代のコンピューティングの先駆けとなる製品と言えるでしょう。