AMD次世代のミドルレンジGPU「Radeon RX 9060 XT」が2025年5月、台湾で開催される世界最大級のコンピューター展示会COMPUTEX周辺で発表される見込みであることが明らかになりました。この情報はChiphellの報告によるもので、NVIDIAのGeForce RTX 5060 Tiシリーズが発売されたばかりの状況下で、中価格帯GPU市場の競争が一段と激しくなることを示しています。
AMDは現時点で次期GPU発売計画を正式に発表していませんが、業界筋によれば、次の大型イベントであるCOMPUTEXに合わせてRDNA 4アーキテクチャを採用した新製品を投入する可能性が高いとされています。これによりAMDは、すでに発売されたハイエンドモデルのRadeon RX 9070 XTに続き、ミドルレンジ市場でもNVIDIAとの競争を本格化させる構えです。
NVIDIAのRTX 5060 Ti発売と市場の現状
先日発売されたNVIDIA GeForce RTX 5060 Tiは、8GBモデルと16GBモデルの2種類が展開され、それぞれ379ドル(約56,850円)と429ドル(約64,350円)という比較的魅力的な価格が設定されました。しかし、実際の市場では希望小売価格(MSRP)を上回る価格設定が散見され、消費者からの評価は芳しくありません。
さらに問題なのは、NVIDIAが在庫レベルの確保に失敗している点です。新製品発売時の在庫不足は慢性的な問題となっており、せっかくの新GPU発売も実際に購入できる消費者が限られている状況です。この点において、AMDにとってはチャンスとも言えるでしょう。Radeon RX 9060 XTでAMDが成功するためには、競争力のある価格設定だけでなく、市場の需要を満たすだけの十分な在庫確保が不可欠となります。
Radeon RX 9060 XTの予想スペックと性能
現時点で判明しているRadeon RX 9060 XTの仕様によると、このGPUはNavi 44ダイを採用し、128ビットバスインターフェースを備えます。メモリ構成はNVIDIAの競合製品と同様に8GBと16GBの2種類が予定されています。
具体的なスペックとしては、2,048個のストリームプロセッサ(SP)を搭載予定で、これはRadeon RX 9070 XTの半分に相当します。クロック周波数については、ゲームクロックが2,620MHz、ブーストクロックが3,230MHzと設定される見込みです。前世代のRadeon RX 7600 XTと比較すると、RDNA 4アーキテクチャを採用した新GPU(Graphics Processing Unit)は大幅な性能向上が期待できます。
メモリ構成に関しては、128ビットメモリバスを採用し、前述のとおり8GBと16GBのGDDR6メモリを搭載する見込みです。これにより、特に高解像度ゲーミングや最新のAI機能の活用において、選択肢が広がることになります。
価格競争と市場戦略
NVIDIAがGeForce RTX 5060 Tiを8GBモデルで379ドル(約56,850円)、16GBモデルで429ドル(約64,350円)で提供していることを考慮すると、AMDはより競争力のある価格設定を行う可能性があります。過去のパターンから考えると、AMDはNVIDIAよりも10〜15%程度低い価格設定を行うことが予想されます。
これによれば、Radeon RX 9060 XTの8GBモデルは330〜350ドル(約49,500〜52,500円)、16GBモデルは380〜400ドル(約57,000〜60,000円)程度の価格設定が予想されます。ただし、これはあくまで推測であり、実際の価格は市場状況や競合状況によって変動する可能性があります。
AMDの市場戦略として重要なのは、単に低価格を提示するだけでなく、十分な供給量を確保することです。近年のGPU市場では、新製品発売時に在庫不足が常態化しており、実際の購入機会が限られることで消費者の不満が高まっています。AMDがこの点でNVIDIAよりも優位に立てれば、市場シェア拡大の大きなチャンスとなるでしょう。
RDNA 4世代のラインナップ予想
興味深いことに、業界からのリークによれば、AMD RDNA 4「Navi 4X」ラインナップにはハイエンドGPUが含まれない可能性があります。これはAMDがミドルレンジからローエンド市場に注力する戦略を採用していることを示唆しています。
すでに発売されているRadeon RX 9070 XTは、このシリーズにおける最上位モデルとなる可能性があり、その下にRadeon RX 9060 XTが位置づけられることになります。その後、さらに低価格帯のRadeon RX 9600シリーズなどが続くと予想されています。
このような戦略は、現在のPC市場において最も需要の高いセグメントに焦点を当てたものと言えます。実際、ゲーミングPCユーザーの大多数は中価格帯のGPUを選択する傾向があり、AMDがこの市場に注力することで、より広範なユーザー層にリーチできる可能性があります。
日本市場への影響と展望
日本市場においては、為替レートや輸入コスト、税金などの要因により、海外価格よりも高めの価格設定が予想されます。仮に米国での価格が8GBモデルで340ドル(約51,000円)、16GBモデルで390ドル(約58,500円)だとすると、日本での実売価格はそれぞれ6万円前後、7万円前後になる可能性があります。
日本のゲーミングPC市場では、コストパフォーマンスを重視するユーザーが多いため、AMDのRadeon RX 9060 XTシリーズが適切な価格と十分な性能を提供できれば、大きな支持を得られる可能性があります。特に、ポータブルゲーミングPCやミドルレンジのゲーミングノートPCに採用されることで、より幅広い展開が期待できます。
また、近年ではAIやクリエイティブワークに対応するGPUの需要も高まっており、こうした用途でもAMDが競争力を持てるかどうかが注目されます。NVIDIAがAI処理において強みを持つ一方、AMDも独自のAI加速技術を強化しており、この分野での競争も激化する見込みです。
まとめ:5月のCOMPUTEXが注目の的に
AMDのRadeon RX 9060 XTの登場は、ミドルレンジGPU市場に新たな活気をもたらすことが期待されます。NVIDIAのGeForce RTX 5060 Tiシリーズに対抗する形で、5月のCOMPUTEX周辺での発表が見込まれていますが、AMDの計画は急に変更されることもあるため、正式発表を待つ必要があります。
成功のカギとなるのは、競争力のある価格設定と十分な在庫確保です。NVIDIAが在庫レベルの確保に苦戦している現状を考えると、AMDにとっては大きなチャンスとなる可能性があります。
また、8GBと16GBの2種類のメモリ構成を提供することで、異なるニーズを持つユーザーに対応できる点も魅力です。特に最新ゲームやAIアプリケーションでは、メモリ容量の重要性が増しており、16GBモデルに対する需要も見込まれます。
最終的に、AMDとNVIDIAの競争が激化することは、消費者にとって良いニュースです。競争が価格低下や性能向上をもたらし、より多くのユーザーが最新のGPUテクノロジーを手頃な価格で享受できるようになるでしょう。5月のCOMPUTEXは、GPU市場の次の展開を占う重要なイベントになりそうです。
