2025年4月、NVIDIAは新たなミドルレンジGPU「GeForce RTX 5060 Ti」をリリースしました。新アーキテクチャ「Blackwell」を採用し、従来のRTX 4060 Tiからの正統進化として期待感が高まりました。ラインナップは8GBと16GBの2つのVRAM容量。
米国価格は16GBモデルが$499(約¥74,850)、8GBモデルが$399(約¥59,850)で、日本市場でもほぼ同等の価格帯で展開されています。
ミドルレンジながら2K(2560×1440)や4K(3840×2160)のゲーミングにも耐えられるかと期待されたこの新GPU。しかし、肝心の8GBモデルの実力は、最新タイトルへの対応力という点で、大きな疑問符がつきました。
実際のベンチマークが明かした「8GBモデル」の辛い現実
新製品発表時、各メディアやレビュワーに提供されたのはほとんどが16GBモデルだけ。8GBモデルは、なぜか詳細な検証情報が不足していました。この「情報不足」に業界内でも疑問が持たれていましたが、海外の著名レビュワーであるHardware Unboxed(HU)がようやく8GBバージョンを入手し、詳細な実機ベンチマークを公開しました。
その驚くべき内容を一部抜粋してご紹介します。
ベンチマーク:人気AAAタイトルでの比較表
ゲームタイトル | 設定 | 16GBモデル | 8GBモデル | FPS差 | FPS差率 |
---|---|---|---|---|---|
The Last of Us Part II | 4K, Very High | 平均70 FPS | 平均35 FPS | 35 FPS | 約100% |
The Last of Us Part II | 1% Low | 320%高速 | – | – | – |
Final Fantasy XIV | 高設定 | 明らかに優秀 | 約30-40%低下 | – | 30-40% |
Hogwarts Legacy | 高設定 | 明らかに優秀 | 約30-40%低下 | – | 30-40% |
特に「The Last of Us Part II」では、高解像度・高画質設定(4K, Very High)で平均70 FPS(16GBモデル) に対し、8GBモデルは僅か35 FPS。さらに1% Low(最低フレームレート)の比較では、16GBモデルが最大で8GBモデルの「3倍以上」のパフォーマンス差を記録しています。
この差はVRAM容量が8GBという事実が、高品質タイトルでは「大きな足かせ」となっている証明と言えます。
そもそも「8GB VRAM」は現代ゲームに足りるのか?
近年のAAAタイトルでは、ビデオメモリの消費量が増大しています。高解像度テクスチャやレイトレーシング、さまざまなエフェクト処理が不可欠となり、8GB VRAMでは性能が急激に低下する“天井”が見えはじめています。
実際、2K(2560×1440)〜4K(3840×2160)の解像度、または高画質設定で快適にプレイしたい場合、8GBはもはや“時代遅れ”。
ユーザーが「最新GPUなら問題ないはず」と思って購入すると、重量級ゲームでは解像度・テクスチャ品質設定を大きく下げるしかなくなる可能性が高いのです。
価格差とコスパ――16GBモデル・競合製品との比較
- RTX 5060 Ti 8GB:$399(約¥59,850)
- RTX 5060 Ti 16GB:$499(約¥74,850)
本来「容量アップ=高価格」は当然ですが、16GBモデルとの価格差はたったの$100(約¥15,000)。しかし性能差はそれ以上に歴然。
さらに、同時期に対抗馬となるAMD Radeon RX 9070 XTなども登場しています。例えばドイツMindFactoryの販売ランキングによると、同店ではAMD RX 9070 XTの方がNVIDIA RTX 5080の10倍も売れているという動向。(日本でも高性能・大容量VRAMモデルのAMD製品シェアが上昇傾向)
他にも中古の上位世代RTXや、廉価な16GB超えのAMD製品など、消費者にとっては選択肢が多様化しています。
具体的な判断基準:あなたはどちらを選ぶべき?
8GBモデルおすすめの人(かなり限定的)
- 主にeスポーツ系や軽量ゲーム(VALORANT, LoL, DOTA2, Apex Legends等)をフルHD(1920×1080)で低~中設定で遊びたい
- 予算がどうしても厳しく、少しでも値段を下げたい
- 短期間の買い替え前提
それ以外の方への推奨
- 2K / 4Kゲーミングをしたい人
- 高画質設定を維持したい人
- ゲームを長く続ける予定の人
- マルチタスクや動画編集・AI処理等も兼用したい人
→RTX 5060 Ti 16GBモデル or AMD Radeon RX 9070 XT等の競合製品をおすすめします!
日本市場での実売状況と注意ポイント
2025年4月現在、日本ではRTX 5060 Tiシリーズは大手量販店やECサイトで広く流通中。ただし、国内流通量では16GBモデルの在庫を厚くしているショップも目立ちます。
価格は円安の影響もあり、店頭価格で8GB版が6万円台半ば、16GB版が8万円前後という価格帯。16GBモデルを選ぶ方が「リセールバリュー」や「長期快適性」も高く、お得と言える状況です。


まとめ:RTX 5060 Ti 8GBは“惜しいGPU”──買う前にしっかり情報を
NVIDIA GeForce RTX 5060 Ti 8GBモデルはブラックウェル世代のポテンシャルを活かしきれない“惜しい”GPUと言えます。
2K/4Kの高解像度&高画質時代ではVRAM 8GBはもはや明確なボトルネック。
一見スペック・価格は魅力的でも、実際のゲーム体験や長期運用を考えると“コスト・満足度”の面で16GBモデルや競合製品が優れています。
これからGPUを選ぶ皆さんへのアドバイス
- スペック表記だけでなく、実際のベンチマーク・ゲーム性能も必ず確認しましょう。
- 用途・目標画質・予算・将来性を考えた上で、最適なモデルを選びましょう。
- 発売直後の購買判断には、複数のレビュー・ショップ情報も参考にすることを強くおすすめします。
今後もメーカー・市場にはVRAM容量の拡大とコスパ強化に期待しつつ、納得できるPCライフを送りましょう!