Metaが長年秘密裏に開発を進めてきたARメガネ「Orion」が、ついにその姿を現しました。2024年9月26日に開催されたMeta Connect 2024で発表されたこのデバイスは、まだプロトタイプ段階ではあるものの、ARの未来を明確に示す画期的な機能を数多く搭載しています。
10年以上の開発期間を経て実現した革新的ARメガネ
Meta CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、Orionの開発に10年以上の歳月を費やしたと語っています。当初は「Project Nazare」として知られていたこのプロジェクトは、Metaの長期的なAR戦略の核心部分を担うものです。
Orionの最大の特徴は、その驚異的な70度という広視野角です。これは従来のARメガネを大きく上回る数値で、より没入感のある AR 体験を提供します。この広視野角は、シリコンカーバイド製のレンズと、ナノスケールの3D構造を持つ導波管、そしてμLEDプロジェクターの組み合わせによって実現されています。
革新的な操作システムとAIアシスタントの融合
Orionの操作方法も、従来のARメガネとは一線を画しています。音声コマンド、アイトラッキング、ハンドトラッキングに加え、リストバンド式の表面筋電位(EMG)センサーを採用。これにより、手を動かすことなく、指の微細な動きだけでスワイプやクリック、スクロールなどの操作が可能となりました。
さらに、Orionには高度なAIアシスタント「Meta AI」が搭載されています。このAIは、メガネに搭載されたセンサーを活用して、ユーザーの周囲の状況を理解し、適切な情報やアドバイスを提供します。例えば、冷蔵庫の中身を見るだけで、可能な料理のレシピを提案するといった使い方ができます。
小型化と性能の両立を実現する独自設計
Orionの設計で特筆すべきは、その小型軽量化への取り組みです。高度な計算処理を行うコンピューティングユニットを、ポケットサイズの外部デバイスに分離することで、メガネ本体の小型化と軽量化を実現しています。これにより、長時間の使用でも快適な装着感を維持することが可能となりました。
将来の商用化に向けた開発ロードマップ
Metaは、Orionをプロトタイプと位置付けており、現段階では一般消費者向けの販売は予定していません。しかし、近い将来の商用化を見据え、社内および一部外部ユーザーにアクセスを開放し、開発を加速させる方針です。
今後の具体的な開発ポイントとして、AR表示品質の更なる向上、デバイスの小型化、大量生産によるコストダウンが挙げられています。Metaは「数年以内に、これらの研究開発の成果を基にした新しいデバイスが登場する」と予告しており、AR技術の急速な進化が期待されます。
まとめ:ARの未来を切り開くOrion
Metaの「Orion」は、ARテクノロジーの集大成とも言える革新的なデバイスです。70度という広視野角、直感的な操作システム、高度なAIアシスタントの統合など、その機能は既存のARメガネを遥かに凌駕しています。
まだプロトタイプ段階ではあるものの、Orionは間違いなくARの未来を示す重要な指標となるでしょう。Metaが掲げる「メタバース」構想の実現に向けた重要な一歩として、今後のOrionの進化と、それに続く商用製品の登場が大いに期待されます。AR技術が私たちの日常生活にもたらす変革は、想像以上に近づいているのかもしれません。