AMDが2025年に投入予定の次世代Ryzen Zen 6「Medusa Ridge」プロセッサーの詳細情報がリークされ、注目を集めています。最大32コアと128MBのL3キャッシュを備える新CPUは、前世代を大幅に上回る性能を約束。既存のAM5ソケットとの互換性も維持されます。
Zen 6「Medusa Ridge」のコア構成とキャッシュ拡張が明らかに
最新情報によると、AMD Zen 6「Medusa Ridge」シリーズは12コア、24コア、32コアの3バリエーションで展開されます。特に注目すべきはキャッシュ容量の大幅増加です。
- 12/24コアモデル:96MB L3キャッシュ
- 32コアモデル:128MB L3キャッシュ
これについて、中国のテックフォーラム「Chiphell」の情報提供者・Zhangzhonghao氏は詳細な内部構造を明かしています。同氏によれば、Zen 6アーキテクチャは以下のような階層構造を採用:
- Zen 6標準CCD:1基あたり48MB L3キャッシュ
- Zen 6C高密度CCD:1基あたり64MB L3キャッシュ
これにより、デュアルCCD構成の場合、標準モデルで96MB、Zen 6Cモデルでは128MBの超大容量キャッシュを実現。従来のZen 5コアと比較して、標準CCDで50%増、Zen 6Cでは2倍のキャッシュ容量向上となります。
AM5ソケット互換性:既存ユーザーへの配慮
Zen 6「Medusa Ridge」の最大の利点は、AM5ソケットの継続採用です。AMDは2025年現在もAM5プラットフォームをサポートしており、最新マザーボードを保有するユーザーはBIOSアップデートのみで新型CPUを利用可能。これにより、ハードウェア買い替えコストを抑えつつ、次世代性能を享受できます。
ただし、32コアモデルでは電力消費と発熱量の増加が予想されるため、高品質な電源ユニットと冷却システムが必須。AMDは次世代冷却ソリューション「Ryzen Cooler Xtreme」の開発も進めているとの噂があります。
Zen 6Cコアの戦略的意義:サーバー技術のデスクトップ流入
32コアモデルに採用されるZen 6Cコアは、元々データセンター向けEPYCプロセッサー用に設計された高密度アーキテクチャ。1つのCCDに最大16コアを集積し、キャッシュ容量も拡張。これにより、マルチスレッド処理が求められる3DレンダリングやAI推論などのワークロードで圧倒的な性能を発揮します。
ただしZen 6Cコアは、シングルスレッド性能よりも電力効率を重視した設計。ゲーム用途では標準Zen 6コア搭載モデルの方が適している可能性があり、ユーザーは用途に応じたモデル選択が求められます。
X3Dモデルの未来:デュアル3D V-Cache実現への挑戦
現行のRyzen 9000X3Dが144MBのL3キャッシュを誇る中、Zen 6世代では3D V-Cache技術のさらなる進化が期待されています。AMD技術責任者のRobert Hallock氏は「デュアルX3Dキャッシュの実現は技術的課題ではなく、コストと需要の問題」と述べており、市場の要望が高まれば採用も検討されるとの見方です。
リーク情報によると、Zen 6 X3DモデルではL3キャッシュが最大192MBに達する可能性も。ただし、3Dスタック技術を用いた場合、発熱管理が最大の課題となり、液冷システムの標準化が進むかもしれません。
Intelとの競争構図:コア戦争の行方
現在のデスクトップCPU市場では、IntelのCore Ultra 9 25900Kが24コアで首位を走っています。AMDが32コアモデルで対抗する場合、マルチスレッド性能で優位性を確立できる見込みです。ただし、一般ユーザー向けには最適化された24コアモデルが主力商品となる可能性が高く、32コアはプロサマーやクリエイター向けのハイエンドモデルとして位置付けられると予想されます。
ノートPC・ポータブルゲーミングPCへの影響
Zen 6アーキテクチャはノートPC向けにも展開され、特にポータブルゲーミングPC市場で革命を起こす可能性があります。現在のRyzen 9 8945HS(8コア/16スレッド)から一気に12コアへ拡張される見通し。これにより、モバイル端末で4Kゲーム配信やリアルタイムレイトレーシングがよりスムーズに実行可能に。
ただし、発熱抑制が最大の課題。AMDはTSMCの3nmプロセスを採用し、電力効率を前代比20%改善する計画です。成功すれば、MacBook Proシリーズと競合する超薄型クリエイターノートPCの実現も夢ではありません。
まとめ:Zen 6が切り開くPCの新時代
AMD Zen 6「Medusa Ridge」の登場は、以下の革新をもたらします:
- コア数とキャッシュ容量の歴史的拡張
- AM5互換性によるユーザー保護
- Zen 6Cコアによるプロフェッショナル向け性能強化
- 3D V-Cache技術のさらなる進化余地
一方で、電力消費と冷却効率の課題が残るものの、AMDが2025-2026年にかけてデスクトップCPU市場で優位性を確立する重要な一手となるでしょう。日本市場においても、円安傾向が続く中での価格設定が注目されます。32コアモデルの推定小売価格は$899(約134,850円)前後との観測もあり、ハイエンドユーザーにとっては投資価値のある選択肢となりそうです。AMDとIntelの技術競争がさらに白熱する中、次世代CPUのベンチマークテストが待ち遠しい限りです。
AMDデスクトップCPUソケット対応表
AM4 製品 | AM4 アーキテクチャ / 年 | AM5 製品 | AM5 アーキテクチャ / 年 |
---|---|---|---|
Ryzen 1000 | Zen 1 (2017) | Ryzen 7000 | Zen 4 (2022) |
Ryzen 2000G | Zen 1 (2018) | Ryzen 8000G | Zen 4 (2024) |
Ryzen 2000 | Zen + (2018) | Ryzen 9000 | Zen 5 (2024) |
Ryzen 3000G | Zen + (2019) | Ryzen 9000X3D | Zen 5 (2025) |
Ryzen 3000 | Zen 2 (2019) | Ryzen 10000? | Zen 6? (2026) |
Ryzen 5000 | Zen 3 (2020) | – | – |
Ryzen 5000G | Zen 3 (2021) | – | – |
Ryzen 4000 | Zen 2 (2022) | – | – |
ガジェットX編集者、相田龍一、静岡県出身、ベテランITエンジニア、パソコン・スマートフォン・WEB制作などIT全般に関わる仕事をしています。