Radeon 890M vs GTX 1650 Ti 2026年版比較
2024年7月29日
「Arc B390」という型番を見たとき、一瞬だけ混乱しました。
B-プレフィックスはBattlemage(Xe2)世代の型番規則だったはずです。ところが今回の Arc G3 Extreme に統合された B390 は、Xe3 アーキテクチャに基づくと報じられています。スペックシートや各メディアの解説を読む限り、B-プレフィックスが世代をまたぐのは紛らわしいものの、実体は Xe3 世代のシリコンというのが共通した見方です。
この記事は「どの携帯機を買うか」ではなく、Arc G3 Extreme という SoC がアーキテクチャとして何者なのかを整理するためのものです。
この記事でわかること
まずはスペックシートから入ります。
| 項目 | Arc G3 Extreme | Arc G3 |
|---|---|---|
| コア / スレッド | 14C / 14T | 14C / 14T |
| P-Core (Cougar Cove) | 2コア、最大 4.7 GHz | 2コア |
| E-Core (Darkmont) | 8コア | 8コア |
| LP E-Core (Darkmont) | 4コア | 4コア |
| iGPU | Arc B390(12 Xe3コア) | 10 Xe3コア構成 |
| GPU クロック | 最大 2.3 GHz | — |
| NPU | NPU 5、46 TOPS INT8 ※1 | 同左 |
| メモリ対応 | LPDDR5X-8533、最大 96GB | 同左 |
| cTDP | 8〜35W | 8〜35W |
| CPU タイル製造 | Intel 18A | Intel 18A |
| GPU タイル製造 | TSMC N3E | TSMC N3E |
※1 Intel 公式仕様ページは取得できませんでしたが、Notebookcheck・TechPowerUp・VideoCardz が NPU 5 を 46 TOPS INT8 と表記しており、本稿はこれを採用します(「50 TOPS」は AMD Z2 Extreme の NPU 値やデバイスメーカーのプラットフォーム合計表記に由来するもので、Intel NPU 単体の値ではありません)。
注目したいのは P-Core が 2 基だけという数字です。ノート向け Core Ultra 200H(Arrow Lake-H)の P-Core 数と比べると控えめに映りますが、これは後述するチップレット設計の制約と、ハンドヘルド向けの TDP 優先策を反映しています。
Arc G3 Extreme の最大の技術的特徴は、CPU タイルと GPU タイルで異なる製造プロセスを使い分ける 3D Foveros 実装です。
Intel 18A は RibbonFET(Gate-All-Around 構造のトランジスタ)と PowerVia(バックサイド電源供給)を組み合わせた最先端ノードです。Intel が自社の Intel 4 比で「約 40% 高い性能/W」と主張しているプロセスで、CPU コアの電力効率に直結します。
GPU タイルを TSMC N3E に割り当てたのは現実的な判断です。GPU のようにロジック密度が高くトランジスタ数が多い部分は、まず TSMC の実績あるプロセスで作り、CPU 側を Intel の新プロセスで仕上げる。製造リスクを分散しながら両方のベストを取る、という設計方針が読み取れます。
AMD Ryzen AI Z2 Extreme(Strix Point ベース)が TSMC N4P のモノリシック設計なのと対照的です。アーキテクチャの差別化として、Intel はチップレット分割で CPU/GPU のプロセス最適化を追求し、AMD は単一ダイでの低レイテンシ・低コストを取りに来ています。メモリ規格は Arc G3 Extreme が LPDDR5X-8533、Z2 Extreme が LPDDR5X-8000 で、データレート上は Intel 側がわずかに上回ります。

「12 Xe3コア」という数字を前世代と比べると、変化の大きさが分かります。
Lunar Lake に搭載された Arc 140V は 8 Xe2コアでした。Arrow Lake-H の Arc 140T に至っては 8 Xe+コア(実態は Alchemist ベースの強化版)です。今回の Arc G3 Extreme はコア数が 12 まで増え、かつアーキテクチャが Xe3 に進化しています。
Xe3 の主な変更点として確認できているのは以下の通りです。
XMX(Xe Matrix eXtensions)エンジンの強化: Arc G3 Extreme の GPU タイルには 96 基の XMX エンジンが搭載されています。これはハードウェアレベルで行列演算を実行するためのユニットで、AI 推論や XeSS(Intel 独自のアップスケーリング)の品質向上に直結します。
XeSS 3 とマルチフレーム生成対応: Xe3 アーキテクチャは XeSS 3 とマルチフレーム生成(MFG)に対応します。AMD の FSR 3 や NVIDIA の DLSS 3 と同様の枠組みで、AI アップスケーリングとフレーム補間を組み合わせることで、レンダリング負荷を下げながら見かけ上のフレームレートを引き上げます。
レイトレーシング対応: Xe3 はハードウェアレイトレーシングに対応しています。ハンドヘルドでレイトレが必要かどうかは別の話ですが、API 互換性の意味で DirectX 12 Ultimate を満たす点は、今後のゲームタイトルとの互換確保として重要です。
ただし、Xe3 の EU(実行ユニット)あたりの演算効率が Xe2 比で具体的に何 % 向上したかを示す独立レビューはまだ存在しません。デバイス出荷は 2026 年 6 月以降であり、現時点での定量的な世代差分は未測定です。
競合として真っ先に比較されるのが AMD Ryzen AI Z2 Extreme です。スペックシートを並べてみます。AMD Ryzen Z2 シリーズの経緯はAMD Ryzen Z2ハンドヘルド発表記事でも整理しています。
| 項目 | Intel Arc G3 Extreme | AMD Ryzen AI Z2 Extreme |
|---|---|---|
| iGPU アーキ | Xe3(B390) | RDNA 3.5(Radeon 890M) |
| GPU コア数 | 12 Xe3コア | 16 CU |
| GPU クロック | 最大 2.3 GHz | 最大 2.9 GHz |
| CPU コア | 2P+8E+4LP(14C) | 8C(Zen 5 ×3 / Zen 5c ×5) |
| TDP | 8〜35W(cTDP) | 15〜35W(cTDP) |
| 製造プロセス | Intel 18A + TSMC N3E | TSMC N4P(モノリシック) |
| NPU | 46 TOPS | 50 TOPS |
| メモリ帯域 | LPDDR5X-8533 | LPDDR5X-8000 |
| AI 演算計 | 約 160 TOPS(GPU+NPU 合算) | 約 50 TOPS(NPU単体公称) |
メモリ規格は Arc G3 Extreme が LPDDR5X-8533、Z2 Extreme が LPDDR5X-8000 で、データレートでは Intel 側がわずかに上回ります。一方、GPU コア数では Arc G3 Extreme の 12 Xe3コアに対し Z2 Extreme は 16 CU。CU と Xe コアは 1 対 1 で比べられるものではないため、この数字だけで優劣は言えません。CPU 側はコア数で Arc G3 Extreme の 14 コア(2P+8E+4LP)が Z2 Extreme の 8 コア(Zen 5 ×3 / Zen 5c ×5)を上回りますが、ピーク周波数は Z2 Extreme(最大 5.0 GHz)の方が高く、設計思想が異なります。
Intel が Computex 2026 で公表した比較データ(Intel 公称値)によると、Arc G3 Extreme は以下の結果を示したとされています。
加えて、CES 2026 のハンズオンでは Cyberpunk 2077(1080p High、アップスケーリングなし)で Arc B390 が約 90 fps 超、Radeon 890M が 28 fps 程度というメディア計測も報じられています(Club386)。
+42% や 17W=35W 相当という数値は Intel 社が Computex で発表した自社計測値で、公称値は良い条件で取られることが多い点に注意が必要です。一方で上記 Cyberpunk のように独立系メディアのハンズオン計測も一部出始めていますが、出荷機での本格的なサードパーティレビュー(2026 年 6 月以降)が揃うまでは、実ゲームでの差がどの程度かは確定とは言えません。ベンチを回してみると話は変わってきます、とは常に思っておきたいところです。
Arc G3 Extreme は CPU タイルに NPU 5 を統合し、46 TOPS INT8 の処理能力を持つとされています。これに GPU タイル(96 XMX エンジン)の演算能力(約 113 TOPS INT8)を合算すると、約 160 TOPS という数字になります。なお、Intel およびデバイスメーカーが「プラットフォーム合計」として公称している AI 性能は CPU 側も含めた最大約 180 TOPS とされており、「160」は GPU+NPU の合算値である点に注意してください。
ただし「160 TOPS」という数字の内訳には注意が必要です。
NPU の TOPS はニューラルネットワーク専用の演算器が出す数値で、電力効率が高い反面、実行できるワークロードが限定されます。GPU の XMX が担う部分は汎用性が高いですが、ゲームとの帯域幅競合が起きます。「合計 TOPS」という単一指標で AI 性能を語ることには限界があり、ローカル LLM 推論なら「NPU TOPS が高いほど良い」とは一概に言えません。
Microsoft が定義する「Copilot+ PC」の要件は NPU 40 TOPS 以上です。Arc G3 Extreme はこの要件を NPU 単体でクリアしています。
当サイトがこれまで扱ってきた iGPU 比較の文脈で整理します。
Arc 140T(Xe+ / 8 Xe+ コア)はノートPC 向け iGPU として、Radeon 890M(RDNA 3.5 / 16 CU)と競合する位置づけでした(Arc 140T vs Radeon 890M の比較記事を参照)。
Arc G3 Extreme はコア数・アーキテクチャの両面でこれらを超える GPU タイルを持ちます。8 Xe+ コアから 12 Xe3 コアへの増加は単純なコア増ではなく、製造プロセスの違い(TSMC N3E)と XMX エンジン強化が伴っています。
ハンドヘルド向けとノート向けでは TDP レンジが違うため単純比較はできませんが、Xe3 世代のアーキテクチャが次世代ノート向け iGPU にも波及すれば、薄型ノート市場でも競争軸が変わる可能性があります。現時点では Arc G3 Extreme はハンドヘルド専用設計として登場しているため、ここはあくまで今後の動向として見ておく話です。
Q: Arc B390 は Battlemage(Xe2)なのですか? A: 違います。B-プレフィックスが Xe2 世代の B580 などと共通なので混同されがちですが、Arc G3 Extreme に搭載される B390 は Xe3 アーキテクチャです。TSMC N3E で製造される GPU タイル自体が Xe3 世代のシリコンです。
Q: 携帯機以外のPC(ノートや自作)には搭載されますか? A: 現時点では Arc G-series はハンドヘルドゲーミング PC 向けに設計・発表された製品群です。Intel は従来のノート向けラインアップ(Core Ultra シリーズ)と別立てで展開しています。
Q: AMD Z2 Extreme との性能差は確定していますか? A: 確定はしていません。Computex で公開された +42% などの数値は Intel 公称の比較データです。一部メディアの CES ハンズオン計測は出始めていますが、出荷機での本格的なサードパーティレビューは 2026 年 6 月以降になります。
Panther Lake のシリコンとして見ると、CPU/GPU を別プロセスで作るチップレット設計は今後のモバイル SoC 設計の一つの解答を示しています。あとは実際の熱管理・ドライバ成熟度・バッテリー持続時間がどう出るか。数字が揃ってきたら、また整理します。なお、Panther Lake の次世代にあたる Nova Lake についてもIntel Nova Lake リークまとめで取り上げています。
Source: Intel Newsroom / Notebookcheck / migovi technical deep dive
只今、価格を取得しています。
(2026年6月7日 07:17 GMT +09:00 時点 - 詳細はこちら価格および発送可能時期は表示された日付/時刻の時点のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、購入の時点で当該の Amazon サイトに表示されている価格および発送可能時期の情報が適用されます。)